第五章    かめや






9/30

先日、10年来の友人と、10年間のうち2度目の再会を果たした。
例のボンベイサファイアの男である。彼は私の数少ない先輩である。
先輩の酒に付き合うのは、つらい。なぜなら、本当に大酒のみだから。
夕方に待ち合わせたのだが、彼は既に酒の匂いを放っている。そこから、延々、彼の行き付けの飲み屋に連れていかれ(もちろん自分の知らない場所で呑むのもまたおもしろい)酒を呑む。
久し振りに会うのもあって、最初はちびちびのんでいたのが、ついに地元の酒『一の蔵』をがんがん開けるようになり、 彼は相当に酔っぱらっていた。
しかし、そのくらいでへこたれる人ではない。楽しい話が続き、いい感じで酔いがまわる。彼はどんな阿呆よりも天才よりも、筋が通っている。だから、にくめない。どこまでも延々話をする。おかみが隅で、私達の会話を聞いたり聞いていなかったり する。おかみさんが「あら、まぁ今日はYさん(先輩の名)の方が酔っぱらっちゃって」なんていって、それを聞いて、わたしが笑う。昔のレコードの値段の話しになり、「あれ いくらぐらいだったかしら」とおかみさんが、カウンターの端に居た老人に聞く。老人は「そのころ、俺はロシアにいたからわからん」などとつぶやく。
東北生まれの女とロシアを知る老人と阿佐ヶ谷の高架下の飲み屋で接点が生まれる。


9/30

雨の月曜。ソープにいく夢を見た。眼鏡の女が「よろしく」と薄着で言う。 肉付きのよさと真面目そうな顔だち。しかし泡まみれの肌はこなれた動きで、もっちりと心地よさをさそう。高い湿度の中、一瞬月が見えた気がした。


10/8

人の幸せをどういう感情で受け止めれば。

10/9

やっと深夜の楽しい時間。骨折した熱帯魚の元気は上々のようだ。


昨年の9/11のことを丸一年過ぎた今頃、考える。事件はいつも、我々の生活の隣にしのびよる。
こっちがめんどくさがりながら、(仕事がなくていらいらしながら)洗濯物をほしているとき、おとなりさんは、セックスに明け暮れている。
嫌な事があって くたくたになって電車に乗っているそばで、馬鹿なサラリーマンが携帯の着メロを30種類ぐらい順番に鳴らして遊んでいる。
のどが痛い、風邪をひく。

今日も夕陽だけが 夕陽だけが きれいで、まぶしさも全部!吸収したいと思いました。
こう思う自分も、きっとだれかの迷惑なのでしょう。


10/10

ちょっといい話。

いい天気だった。
その日の気紛れで、いつもの道の一本裏の道を歩く。秋の空と、けだるい住宅街の空気が中和して、昼寝猫のつややかな毛を揺らしていた。だから私は手にした煙草に火をつけずにそっと鞄にしまいこんだ。ふと頭に浮かぶ文字
「Smoking clean」

やっべ、地球にやさしい私。


10/11

男1「先生、もう走れません」
男2「じや、走らなくいい」
男1「走ります」
というわけで、(どういうわけか)深夜の甲州街道をつっぱしり、途中24時間営業の吉野屋で牛丼を召して 帰宅した私は、自転車の漕ぎ過ぎで、「おまた」が痛い。とても痛い。
痛いながらも ぐっとこらえて、虫の声を聞きながら眠りについた。

自転車 貸してくれた人、ありがとう。


10/13

12時まわって深夜の酒屋。レジから少しはなれた場所で、店のおっちゃんが、缶酎ハイを飲んでいた。 その横顔。


10/15

アキノ アメハ イツモ カナシイ。


10/18

稽古


10/19

反対側の東京。
分厚い雲が空を覆っていた。
賑やかな繁華街。
楽しげな観光客、
お年寄り、
病気をもつ人、
車椅子の人、
付き添いの人が
ゆっくりと行き交う。

夕刻、隅田川。
水上バスに乗る。
重たい空、重たい水。
倉庫の壁/半分閉じた水門。
水色のシートの箱が並ぶ。
だくだくとした人。
ポツポツと明りの灯る高層マンション。
ボールを追う兄弟。


かもめが飛んだ。


10/25

こないだ、気分転換にと、でかけた仏閣で、おみくじをひいた。

・・・「凶」。

ちなみにそこには、大凶はないので、一番最悪のくじ。
凶は凶でも、ひくものによって、おことばがちがう。

失せものは出てこず。
行く先々で、失敗。
一家離散。
友達はつくろうとすればする程、離れていく。
しかも、酒があなたをよくない方へと導く。

いつだったか、稽古帰りに飲み過ぎて、ひとり道ばたで休んでいた。
そこは、くしくも、ビルとビルの間。
気をとりなおして、 よっこらしょと立とうとすると、
背負っているリュックが壁と壁の間に、はさまっていた。
ぐらぐらする頭と体を必死によじって脱出したが、
道ゆくカップルにさげすみの視線をなんども投げられた。
そんなこともあったわけで、
酒の飲過ぎは、心身によくないな、駄目だなと思っていた矢先に、
観音様からのおつげ。

「酒が あなたを滅ぼします。」


実際、一度滅んでいる。

だ け ど、
目の前にあれば絶対飲みたくなる酒。
飲めばとまらなくなる酒。

恐ろしい。

そんなこんなで、最近お酒はひかえている。
お酒をひかえたところでしかし、どうも調子の悪い日々。

こういう時は、おとなしくしていたい。


今日は、一日だれとも会わずに、過ごす。

酒に誘ってくれたkさん、断ってごめんなさい。


なんだか、秋は、心もとない。

しかしリュックがはさまったって、
体ごと奮闘せずとも、リュックをおろしてから、
ひっぱればよかったんだな。



酒は脳みそをも侵食するようです。







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